The cat once I lived with

定本こっそり日記

2024年11月5日火曜日

約3年かけて次第に忘れていったもの


私が、精神科の主治医に頼んで、カウンセリングの先生に紹介状を書いてもらったのは、2021年の終わり頃だった。
2022年の1月からカウンセリングに通うようになった。
その頃の私は、自分には何か、トラウマがあるに違いないと思いこんでいた。
そして、トラウマケアの一つである、EMDRをカウンセリングの先生にお願いしたいと考えていた。

しかし、カウンセリングの先生は私にEMDRを実施することをよしとしなかった。
その理由ははっきりとはわからないが、私の精神疾患が原因なのかもしれない。
そして、2023年の夏に私は全額自費で発達障害の検査を受け、ADHDとASDを持っていることが発覚した。
発達障害の専門医からは、私の苦しさはトラウマからくるものではないとはっきり指摘された。

どうして自分にトラウマがあると思っていたのだろう。
それは、ベッセル・ヴァン・デア・コークの大著、身体はトラウマを記録する、の日本語訳を読んだからだと思う。
その本はあまりに自分に当てはまる点が多いと感じたし、何よりも興味深かった。
本編だけで600ページある本だが、あっという間に読み終わった。

その本の中で紹介されていたのがEMDRだったのだった。
カウンセリングの先生はEMDRはしなかったが、私にポリヴェーガル理論のわかりやすい実践書を推薦してくれた。
この本もすごくよかった。
不安・イライラがスッと消え去る「安心のタネ」の育て方 ポリヴェーガル理論の第一人者が教える47のコツというタイトルの本だ。

ポリヴェーガル理論も、前出のヴァン・デア・コークの本で紹介されていたものだ。
本の中では「多重迷走神経理論」という日本語で訳されていた。

そこまではよかった。
でも私はその、実践をたちまち忘れていたようだ。
今日また、「安心のタネ」の育て方の本を読み直している。
この本を初めて読んだとき、各ワークを紙に書き出して一覧できるようにして、いつも持って歩いていた。
スノードームも買った。

ポリヴェーガル理論を提唱したポージェス博士の著書も読んだ形跡がある。
私のKindleのライブラリにあるからだ。
もう一度学び直したい。
ヴァン・デア・コークの本も、もう一度読みたい。

正確にいうならば、私はトラウマを抱えてもおかしくない経験はしていると思うからだ。
私の幼少期からの家庭の不和、私が生まれる前に3歳で死んだ長兄のエピソードを延々と幼い私に語る母、15歳で体験した性被害、などがぱっと浮かぶ。
発達障害の専門医とのセッションの中で、私が生育期の思い出について長々語ったとき、私は、両親が不和になったのは、私がピアノを習いたいと言ったからだ、と話した。
発達障害の専門医は、それは違う、幼い子どもは多くの場合、自分のせいで両親が不和になったと思いこむけれど、あなたが原因ではない、両親はそれ以前から仲が悪かったのだと言った。
これは私にとって大きな驚きだった。

確かにそうかもしれない。
でも、大人になっても歳をとってもそのように自分で思いこんでいたのだ。
その時発達障害の検査を受けていなかったら、私は死ぬまで自分のピアノへの気持ちが両親の不和の原因だと思い続けていたことだろう。

「安心のタネ」の育て方を紹介するためには、私はこれだけのことを書かなくてはならなかった。
思い出す必要があったみたいだ。
そして、あなたにこの文章を読んでもらいたかった。

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